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社長コラム【会社改革の500日 R3 vol.4】「企業の目的」とドラッカー

企業が目指すべきは何?

売上の極大化か、利益の幅か?新年、真新しい気持ちで会社の先行きを考える。突き詰めていくと最後は、「企業が目指すべきゴールは何か?」という疑問に行きつく。根源的な問いだけに簡単に答えは出せない。

利益でなく、顧客の創造。 顧客満足と価値創造。

創業初期、4年の赤字にあえぐ中、ピーター・ドラッカーの著作をむさぼり読んだ。“マネジメントの父”と呼ばれる経営学者。「企業の目的では利益ではない。利益とは、事業の妥当性を検証する一つの規準に過ぎない。企業の目的として有効な定義はただひとつ、顧客を創造することである」(現代の経営) 

なるほど、と思った。中学の教科書に「目的は利潤追求」とあったが、間違いだった。だけど、『顧客創造』ってなんだ?ドラッカー自身は「顧客の集合体としての市場を創り出すこと」と説明している。

「したがって、企業はただ二つだけの企業家的な機能をもつ」。それがマーケティングとイノベーション。マーケティングとは「市場を理解し、顧客のニーズを満たすこと」、イノベーションとは「新しい価値を創造することで市場創造すること」、という。

ハリウッドの映画監督を諦めて帰国した僕がやりたかったのは、『物語の面白さを、ネットにぶつける』こと。それは、出来合いの映画のネット配信といった表面的な事でなく、インタラクティブ性や同時参加性を物語に直接組込むということだ。

『価値の創造』という言葉に勇気をもらい、物語ゲームを発展させ、着メロに物語要素を付加し、独自路線を編出していった。事業は軌道にのったが、次の壁に突き当たった。

規模拡大のみの限界

始めた恋愛ゲームに手ごたえを感じ、「恋ゲ・ダントツ化」という集中戦略で事業を一本に絞り、大当たり。急成長を数年続け、売上は60億へ。会社を上場、東証一部に導いた。

その後、エアポケットに陥ったのだ。成長は続いていたが勢いは弱まり、僕は会社を導くべき目標を見失った。上場審査の3年間は規模成長だけを求められた(ように感じていた)が、こんな事は永遠には続けられない。拡大だけが目的なのか?

規模の成長から、質の成長へ。

そんな時刺さったのは、この言葉。「成長そのものを目標にすることは間違い。大きくなること自体に価値はない。『よい企業になる』ことが正しい目標である。成長そのものは虚栄でしかない」(マネジメント 第9章)

問題は、『よい企業』とはどんな企業か、だ。原点に立ち返れば、『顧客創造』を続ける企業。つまり、「顧客ニーズを満たし」つつ、成長ステージや時代変化に合わせ「価値を創造」する企業。規模ではなく質的成長をしなければならない。

具体的には、現業の進化と、新領域への進出。一言で『進化&多角化』。その時から今まで10年に及び試行錯誤している。現在、3次目だ。

多角化、10年掛かりで学んだこと

第1次は上場後から4年間。日女ノウハウを英女と男性向けへ広げた。津谷・東は家族で渡米しSFスタジオを設立した。苦闘数年の後、両事業とも黒字転換となったが、携わったのは一部の人のみ。帰国後、リーダー達と話合いを重ねる中で、日女の現場ではフラストレーションが溜まりマグマになっているのを感じた。主力の進化が置いてきぼりになっていたのだ。

早速、コア層向けやカード型、リアルイベント、声優、SNS、さらに、VR化、アニメ化まで広げて行った。これが第2次。しかし、結果としてこの拡張は性急すぎた。アプリ市場自体が横ばいで、津谷・東も各人の特性を把握できていなかった。新領域の一部ノウハウは得たが、通期で赤字10億。急ブレーキをかける羽目となった。

多角化に必要な「仕組みと意識」

それからが第3次。ムリ目の売上目標を止め、じっくり効率アップに舵を切った。

新しい事は小さく始めた。攻め方を粘り強く探求。運営はスリム化。半年おきに成果を見極め、勝負所で一気に攻め、ダメならスッと撤退、など、仕組み化が肝心だ。

もう一つ学んだのは、意識や風土づくりの大切さ。失敗しても逃げ出さず次への意欲をもてる風土が欠かせない。プレッシャーと大らかさのバランスが難しい。

今年留意すべきは、「複雑すぎ」

ドラッカーは「多角化は万能薬ではない」という。「多角化には適切なものと不適切なものがある。適切な多角化は、単一市場・技術の企業に劣らない業績をもたらす。しかし、不適切な多角化はそうではない」

また、「多角化している組織はマネジメントが難しい」「経営者が、事業とその現実、働く人、経営環境、顧客、技術を自らの目で見、知り、理解することができなくなり、報告、数字、データなど抽象的なものに依存するようになった時、組織は複雑になりすぎで、マネジメントできなくなったと考えてよい」

今年、邁進しつつも、ドラッカーの指摘に気を付けていきたい。

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