【R2 vol.1】苦しい戦いの中で「対話」に目覚めた
1.2年間の改革で、対話を再認識。
改革2年目の前期は、赤字に陥り、大変な一年だった。
背景にはアプリ市場全体の成熟がある。数年続いた急成長が年4%の緩やかさに落ち込み、上場アプリ企業のほとんどは売上を伸ばせなくなった。半数近くは赤字となり、ボルテージも商品進化は進んでいるものの、業績には至っていなかった。
改革成果を数字に繋げなければならない。初年度に商品づくりや宣伝を全面的に変えたが、それを最少人数で廻していることもあり、知らないうちに組織のあちこちでギクシャクが発生していた。仕事がスムースにまわっていないのだ。改めて認識したのは対話の重要性だった。
対話を促す施策を打ち続けた。結果、売上と経費の均衡に繋がり、9月には20ヵ月ぶりに月ベースでの黒字を達成した。社員たちの底力を感じた。その直後の10~12月四半期は、あと一歩0.6%(売上比)の利益で黒字というところまで回復した。振り返る余裕も生まれ、この文章を1年ぶりに再開する次第だ。
2.改革による「新しい関係」が、組織のギクシャクを生んだ。
なぜギクシャクが発生したか。改革により社内に「新しい関係」が発生したからだ。今までにない部署ができ、一緒に働いたことがない人とチームになる。縦横ナナメに新しい関係ができた。スムースな意思疎通のためには、互いを分かり合う事が必要がある。
しかし現実は逆行していた。例えば飲み会。経費削減のため全社横断の忘年会などを取止めていた。社員同士が酒を酌み交わし、仕事やプライベートを自由に語り合う場がなくなっていた。昼のオフィスでも減っていたはずだ。実はそういう場こそ大事だったのだ。「問題はすぐには解決しない。それでも、自分の事情を知っておいてほしい。相手の状況も聞いておきたい」 分かってもらえるだけで、人は変わる。
しっかりとした対話を促す必要がある。中堅リーダーたちから参画したいと声が上がった。彼らは現場の若手たちと日常接して、ギクシャクを目の当たりにしている。その声にピンと来た。「本部会」という名の会議体を部門ごとに設置。僕も参加し、若手代表たちと直接話し合うことにした。
3.中堅リーダー主導で行った7つの施策。
テーマは、働き方一般から、若手同士の横の交流、キャリアアップ、仕事のやりがいなどについて。意見や提案をもらい、積極的に採用した。計画や実行は彼らに先頭に立ってもらった。いくつかを紹介する。
◆楽しく働く
①「楽しく働くプロジェクト」(楽しく働く お菓子、ヨガ)
まず、自分たちが楽しんでない。仕事だけで余裕ない、という意見がでた。その通りだ。ガンジガラメの感覚。ヨガ教室やゲーム大会の開催、お菓子の定期配布、オフィス装飾等を行った。
◆お互いの理解
②「1on1(ワンオンワン)ミーティング」
上司と部下が1対1で話す機会を月に一度設けた。仕事の悩みや理想のキャリア、プライベートな話題まで幅広く話してもらう。これが意外にも定着している。
③「プロフM会・TL会」
若手リーダーが、部下のマネジメントをうまくできず悩む。孤立する。また、職能を細分化したことにより、作業や責任の押付け合いも起こっていた。お茶を飲みながらの、部門を超えた交流会で分かち合いが持てたようだ。
◆仕事の自慢、褒められ
④「YummyLT」
開発エンジニアたちの発案で、自分たちがやった技術的ブレークスルーを自慢する会。会場に用意されているのはビールやピザ。持ち時間は一人10分。カジュアルな空間でラフに気軽に。このスタイルが好評だった。
⑤「受賞者アプローズ」
仕事でせっかく成果を出したなら、大きく賞賛されたい。そこで、全社員が集まる会の最後で受賞者を壇上で表彰することに。ノリのいい曲に合わせステップ踏んで登場してもらう。会の進行もフランクにし、良い結果の発表には積極的に拍手する。堅苦しさがほぐれ、参加者のテンションも上がった。
◆仕事の広がり
⑥「ナナメ交流会」
仕事ができる社員は、会社の仕事すべてを分かった気になり、小さく感じてしまいがちだ。他部署の先輩社員とナナメに交流することで、新しい可能性や、行動次第でいくらでも切り拓けることを感じてもらう。
⑦「社内報web」
Web上で閲覧できる社内報だ。毎月、社員2名をインタビューし、趣味や近況を語ってもらう。意外な趣味や赤ちゃんの誕生を報告。津谷・東も近況の写真付きコラムを交代で書くようにした。
4.改革は全員で。
オフィスでパソコンを睨み、会議で発表するだけが仕事ではない。社員同士の「対話」によって、新しい気付きを得たり、教え合い助け合って商品を生み出していく。改めて、改革は社長一人がやるものではない事を悟った。幹部、中堅、若手が、それぞれの立場で考え行動し、初めて会社を動かせる。長く苦しいトンネルだったが、得たものは大きい。(Y)