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《対談》時代が求めるコンテンツを作り続ける ボルテージ東奈々子×漫画家ひうらさとる
仕事とライフステージ、その関係性は?コンテンツの背景にある女性としての人生。

 恋愛と、仕事と、趣味。20・30代の女性が一番大切にしているのはどれでしょうか?その答えは時代によって変わってきました。そして生み出されるコンテンツのテーマも。今回のゲストは、2000年代に大ヒットを記録した『ホタルノヒカリ』を代表作に持つ漫画家のひうらさとるさん。「オトナ女子」を見つめ続けてきたひうらさんと10年間恋愛ドラマアプリを作り続けてきたボルテージの副会長 東奈々子と企画担当の社員2人がその舞台裏を語ります。
最終回のテーマは、コンテンツ発信とプライベートの両立。ひうらさんと東が女性としての人生や、子育て術、1日のスケジュールについて語ります。女性活躍の先駆者である2人の心の支えとは、一体何なのでしょうか。

コンテンツのバックボーンは、自分の実体験。

――お二人ともコンテンツ発信者でありながら、一方で女性としての人生を楽しまれている印象があります。自分のライフステージがコンテンツのテーマに影響を与えることはありましたか?

ひうら:私は、それぞれのライフステージにおける悩みを10年くらい熟成させてからコンテンツとして出しています。悩みというほど大げさなものでもないのですが、思春期特有の人を好きになる気持ちとか、アラサー時代のこじらせたような気持ちとか……。俯瞰して見えるようになってから漫画にしています。

:自分の中で消化する時間って大事ですよね。私も自分のライフステージをもとにコンテンツを生み出した経験があります。2011年に配信を開始した『LOVE and JOB オトナの事情』はその一つ。仕事に打ち込む女性が主人公で、『セックス・アンド・ザ・シティ』に登場するような女友達が出てくるんですよ。

ひうら:ちょうど仕事をバリバリこなすキャリア志向の女性が増えてきて、仕事と恋愛のバランスに悩む女性が増えた時代ですよね。

:私のリアルタイムでの経験をもとに『恋も!仕事も!シリーズ』っていうのを立ち上げたんです。女性の人生、胸キュンだけじゃないと。でも当時、その考え方は、テレビドラマではあるけど、ケータイコンテンツでは早かったみたいで……。ボルテージは創立時から携帯電話やスマートフォンの市場にコンテンツを出してきたので、ピンときた瞬間に企画を立ち上げていたんですが、タイミングの見極めが難しいですね。

ひうら:でも「今この気持ちを伝えたい!」っていう瞬間的な感覚って大事ですよね。私の場合は10年のタイムラグがありますが、実体験をもとにして描いた漫画がヒットすると、読者と直接つながれたような気持ちになるんです。18歳のときに『なかよし』という幼年誌でデビューして、その後読者の成長とともに『別冊フレンド』『Kiss』と大人向けの雑誌に移っているんですけど、常に10歳下の女性たちに経験談を伝えているような感覚で描いているんですよ。

:ユーザーさんと一緒に成長していく感覚、とてもよくわかります。ボルテージも10年前の配信開始時に20歳前後で『恋アプ』を楽しんでくださったユーザーさんが今アラサーで、仕事や子育てをしながら引き続き利用してくださっているんです。これからも一緒に成長してくださったユーザーさんが満足してくれる作品も作りながら、20歳前後の新しいユーザーさんにも楽しめる新しい作品にもチャレンジしていこうと思っています。

ひうら:お互い、それぞれのライフステージで悩みながらも前向きに進んでいく、女性ならではの感性をいかした作品を生み出し続けていきたいですね。

 

東 奈々子
取締役副会長・ファウンダー
Voltage Entertainment USA, Inc. COO
津田塾大学卒業後、総合職として博報堂に入社。2000年パートナー津谷の起業に伴いボルテージへ参画、副社長に。ボルテージ東証一部上場を経て、13年から米国進出のため3人の子どもとともにサンフランシスコへ。16年3月に帰国。
ひうらさとる
漫画家
大阪府出身。1984年に『なかよし』でデビュー。主な作品に『ホタルノヒカリ』『メゾンde長屋さん』『ヒゲの妊婦(43)』『女子高生チヨ(64)』など。現在、月刊『Kiss』(講談社)で『ホタルノヒカリBaby』を連載中。一児の母。

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