《対談》ボルテージ社員×漫画家ひうらさとる 共感される物語にはヒミツがあった!クリエイターが知っておきたい4つの極意。
出産後の「胸キュン枯渇問題」どう乗り切る?
――20代から東京で暮らし、40代で結婚、漫画家を続けながら高齢出産を経験されたひうらさん。その間、心境の変化はありましたか?
ひうら:20代の頃はミーハーだったので、「東京タワーが見える都会の中心に住んでいたい」「何か面白いことがあるかもしれないから飲み会は最後まで帰らない」というこだわりがありました。仕事も目一杯つめこんで、限界に挑戦していましたね。でも30代になると、面白いことなんて10回に1回くらいしか起きないんだなってわかってきたんです。
遠藤:それで結婚を?
ひうら:いえ、結婚はまだまだ先。親には「早く結婚しなさい」と言われていたんですが、いつも「仕事やめられないから」と言っていました。仕事を続けながら結婚する人もいるんですけどね(笑)でも20代の頃のように都会でキラキラしていなきゃいけない、っていう気持ちは薄れていました。それで、のんびりした郊外に引っ越したんです。
遠藤:『ホタルノヒカリ』みたいですね。
ひうら:そう!『ホタルノヒカリ』を描きながら蛍のような生活を送っていたんです。そして40代。自由な暮らしも、もういいかなと思い始めました。それまでは、結婚したり、親に顔を見せたり、子どもの行事に行ったりするのは何だか面倒臭そうだと思っていたんですよ。でも家族のいる暮らしのほうが、自由に生きるより恰好よく見えたんですよね。ちょうどそのころ出会いもあり、41歳で結婚、43歳で出産しました。
堀井:高齢出産の話、『ヒゲの妊婦(43)』で読みました。ひうらさんは妊娠中ずっと健康体で、お産も楽だったんですよね。私は産後の肥立ちが悪かったのですごくうらやましかったです。産む直前にも豪華な食事をされたと描いてありましたが、私はそんな食欲全くありませんでした。
ひうら:本当ですか!?こればっかりは体質なのでどうにもならないですよね。
堀井:あくまで個人的な見解ですが、ひうらさんを見ていると、何歳であろうと若い感性を持っていれば妊娠生活が楽しくなりそうな気がしてきます。子どもをほしがっている会社の後輩にも「若々しく生きていきなさい」って言っているんですよ(笑)
ひうら:ありがとうございます。遠藤さんも最近お仕事に復帰されたと聞きました。
遠藤:私も昨年出産して、2ヵ月前に復帰しました。ただ、一つ悩みがあって……。仕事中、意識的に脳内をきゃぴきゃぴしたモードにしておかないと、キュンとするコンテンツを創れなくなってしまったんです。それまでは自然に想像が膨らんでいたのに。
ひうら:私も出産後1年は子育てに必死でしたよ。感覚が変わってしまって、恋愛モノの漫画に対する意欲がわきませんでした。だから『メゾンde長屋サン』っていう落語の漫画を描いていたんです。でも2~3年すると自然に戻りましたよ。
遠藤:それであの漫画が生まれたんですね。じゃあ私は今リハビリ期間?
堀井:きっとそうですよ。私はいま子どもが2歳半で、ようやく胸キュンが戻りかけているような気がします。
ひうら:子どもが生まれてすぐの頃は、目の前の現実をなんとかしないと、っていう気持ちが強くなっているのかもしれません。でも徐々に、自然に戻ると思います。育児と仕事、お互い今後も楽しみながら頑張りましょうね!

取材・文/華井由利奈
第3回に続く
- ひうらさとる
- 漫画家
- 大阪府出身。1984年に『なかよし』でデビュー。主な作品に『ホタルノヒカリ』『メゾンde長屋さん』『ヒゲの妊婦(43)』『女子高生チヨ(64)』など。現在、月刊『Kiss』(講談社)で『ホタルノヒカリBaby』を連載中。一児の母。