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ロールモデルのいない人生のつくりかた<Vol.3> 「見たことのないものを見てみたい」新たな道を切り拓く2人の共通点

乙女心をつかむ恋愛ドラマアプリを生み出し続ける「ボルテージ」と、世界で活躍するクリエイティブディレクター佐藤可士和氏の事務所「SAMURAI」。仕事の領域も組織構成も全く違いますが、実はどちらも創業者夫婦が公私ともにパートナーとなって大きく成長した会社です。ちょっと変わり者の夫を持つ妻たちは、いったいどのように会社組織と自分の人生をつくりあげてきたのでしょうか?
最終回となる第三回のテーマは、今話題の「働き方」や女性としてのマネジメント術、そして将来の展望。働く女性として新しい道を歩み続ける2人の共通点に迫ります。

“自分の人生を大事にする”働き方

――昨今、「働き方改革」が一つのトレンドになっていますが、SAMURAIの社員さんはどんな働き方をしているんですか?

佐藤:SAMURAIにはアシスタントマネージャーの女性が2人いますが、1人は毎日、もう1人の育児中の女性は金曜日だけ出勤しています。この体制のお陰で、毎日出勤している女性も金曜日に有休が取りやすいですし、他の曜日でも2人で相談して体制を整え、お休みをとったりしています。私は一つの会社でバリバリ働いて頭角を現すということ以外にも、いろんな人生があると思っています。

:フレキシブルな働き方を認めているんですね。

佐藤:最近話題になってきている「パラレルワーク」をしているスタッフもいて、彼女はヨガの講師とSAMURAIの仕事を両立させているんですよ。「働く」って、男性と同じように業務をこなして実績を出さなければというイメージが強いですが、他にもいろんな方法があると思うんです。SAMURAI以外の場所で得たインスピレーションを、仕事にいかそうとする姿勢が大切なのではないでしょうか。ボルテージさんはどうですか?

:我々は、まだパラレルワークまでは認めていません。半年前から、正社員にはテレワークを導入し、少しずつ利用者が増えてきているところです。最近では勤務時間を3パターンから選べるようにして、朝早く来てその分早く帰れる制度も導入しました。

佐藤:でも、日本社会には、がむしゃらに働かなければという空気がまだ残っていますよね。

:そう。でも、仕事だけでなく、自分の人生を歩むための時間も大切にして欲しい。仕事に費やすエネルギーは、0%か100%のどっちかではないと思うんです。例えば仕事に対するエネルギーを80%にして、残りの20%を育児や介護に費やすっていうのは、日本でもずいぶん浸透してきたと思います。ただ、それ以外の分野に20%を費やすのはまだまだ認められにくい雰囲気があるなと感じます。そういう意味でSAMURAIの働き方はすごく進んでるね。

佐藤:そう言ってもらえると嬉しいです。

「好き嫌い」より「良し悪し」で判断

――ところで、女性ならではのマネジメントで何か気を付けている点はありますか?

佐藤:感情的にならないことでしょうか。なっても仕方ないし…(笑)人をマネジメントする立場の女性にとっても大事なポイントだと思います。喜怒哀楽が激しすぎると仕事に支障をきたす場合もありますし。

:その通りですね。それ以外でいうと、私は、「好き嫌い」ではなく「良し悪し」で判断するように気をつけています。まずは本人になぜそう思うかを聞く。その上で良くないと思うところは、なぜダメだと思うかなるべく具体的に理由を伝えるようにしています。同じダメを繰り返してほしくないので。

佐藤:明確な判断基準をしっかり提示するんですね。

:なるべくそうしています。感情的ではなく、客観的な視点で、例えばユーザーさんからどう見えるかとか、入社一年目の社員にどう受け止められるかとか。

佐藤: 個人の好き嫌いが判断基準になっているような人が、チームをまとめて動かすのは難しいですよね。感情をコントロールして、いつもニュートラルでいながら、女性らしい笑顔と柔和な雰囲気をキープしていたいと思っています。

 

 

東 奈々子
取締役副会長・ファウンダー
Voltage Entertainment USA, Inc. COO
1969年東京生。津田塾大学学芸学部卒業後、広告代理店に入社。2000年パートナー津谷の起業に伴いボルテージへ参画、副社長に。ボルテージ東証一部上場を経て、13年から米国進出のため、3人の子どもと共にサンフランシスコへ。16年3月に帰国。
佐藤悦子
「SAMURAI」クリエイティブマネージャー
1969年東京生。早稲田大学教育学部卒業後、広告代理店、外資系化粧品ブランド勤務を経て2001年クリエイティブディレクター佐藤可士和のマネージャーとしてSAMURAIに参加。大学や幼稚園のリニューアル、病院のトータルディレクション、数々の企業のCIやブランディング、商品及び店舗開発などプロジェクトのクリエイティブマネージメント&プロデュースに幅広く携わる。著書に「SAMURAI 佐藤可士和のつくり方 改訂新版」(誠文堂新光社)、「子どもに体験させたい20のこと」(筑摩書房)など。

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