特集

ロールモデルのいない人生のつくりかた<Vol.2> 夫婦二人三脚で、会社と子どもを育てる!女性経営者&マネージャーの24時間管理術

朝はヨガ、昼は仕事、夜はお菓子作り。充実した1日を過ごす秘訣とは?

――お二人ともご夫婦で事務所や会社を経営されていますが、“夫を支えている”、という意識はありますか?

佐藤:ないですね。公私ともにパートナーであり、一緒に人生を歩んでいる感じ。私の人生の醍醐味は「見たことのないものを見ること」ということなのですが、佐藤可士和とSAMURAIのクリエイションをマネジメントすることによって、その見たことのないものを見せてもらっている感覚です。彼も私を人生のパートナーだと思っているので、支えられているっていう意識は持っていないと思います。東さんは、客観的に見ると津谷社長を支えている感じがしますけど、実際のところはどうですか?

:え、支えてる? そう見える!?(笑)

佐藤:だって朝昼晩ずーっとご夫婦で一緒だから(笑)

:確かに……。朝は一緒に通勤して、会社でもずっと一緒で、帰りは一緒に帰るので、別々で行動することは滅多にないですね。でも飽きたとか考える余裕がない(笑)二人で、会社に対する責任や、ユーザーさんにいい作品を出していきたいっていう想いをベースに、一日中いろんな議論をしているんです。

佐藤:仕事とプライベートを分けないのは、うちも同じですね。それぞれのスケジュールで動いているので常に一緒にいるわけじゃないけど、思ったことはすぐ言うようにしてるから。例えば「今度のプレゼンはこうしようと思う」って言われて見て、納得しきれない部分があるときは「ちょっと何か足りないかも……」って伝えたり。

:ケンカにはならないの? 


佐藤:ケンカにはならないかな(笑)私がちょっと引っかかるときって、本当は自分でも気になるところがあるみたいで。「どこが引っかかる?」って聞かれるから、それに対して議論を重ねていく感じ。

:夫がクリエイティブディレクターで、妻が客観的な視点。上手く役割を分担しているんですね。我々は、津谷が方向性を示して、そのフォローを私がするという感じです。相撲部屋の女将さんみたいな。社員は相撲部屋の若い衆かな。親方に言いにくいことは、女将に言いに来たり(笑)

佐藤:おもしろい例えですね(笑)ところで、東さんは家にいる間はどんな風に過ごしてるの?

:朝は5時すぎに目が覚めて、ちょっと読書をしたりしてから、子どもの用意にかかります。お弁当を作りながら、子どもとNHKのテレビ体操をやるパターンが多い。宿題をやらせて、学校に送り出して、朝8時過ぎから仕事スタート。ちょうどその頃、サンフランシスコのスタジオは午後4時頃なので、連絡を取り合うこともあります。夕食は家族そろって7時半か8時頃ですね。その後、子どもが寝るまで相手かな。最近はお菓子作りがブームなの。

佐藤:平日にお菓子づくり!?

:先週は夜3回シフォンケーキを作ったよ。30分くらいで出来るし。一番下の子がやりたがるので付き合っているんだけど、いい気分転換になってます。平日は生活そのものがルーティーン化しているから、そのなかに上手く組み込めれば回っていく感じ。佐藤さんも朝型?

佐藤:朝型です。私もいつも5時半くらいに起きて、ゆっくりお風呂に入ったり、ヨガをしたり。7時に子どもが起きてきて、朝ごはんを家族3人で食べて、8時すぎから仕事を始めます。夜は日によって違うから、なんとも言えないかな。家で食事をするとき、食後に子どもの宿題その他で私がバタバタしていると夫がお皿を洗ってくれるのは助かります!

:我が家も、食後の果物の用意と食器の片付けは大体やってくれます。そこら辺はアメリカ人感覚なので。昨年まで3年間、子会社の立ち上げのために家族でシリコンバレーに住んでいたんだけど、夫婦が協力して学校や習い事に送り迎えに行ったりする風景が当たり前でした。

佐藤:男女問わず、プライベートの時間は大切よね。私は数年前から趣味で着物を着るようになったんです。東京国際映画祭のパーティに行ったとき、ハリウッド女優が私と同じようなドレスを着ているのを見て、「こういう場で私がドレスを着る意味はないんじゃないかな」って思って。着物を着始めたら、いろんな人に会うたびに話がはずんで、お茶も習うようになりました。


:素敵ですね! 私は、週末に夫婦でスカッシュしたり、家族でムービーナイトを楽しんだりしています。だけど、プライベートで自分自身の時間はほとんどないかも…(笑)

佐藤:そうなの!? 今までにやったことのないことを一つ始めると、新しい道が次々と見つかると思うよ。

:仕事を持つ人にとって、人生における仕事のウエイトが高いのは当然ですが、長時間労働で人生の時間を犠牲にするのはもったいないと思います。自分に合った効率的な仕事のやり方を見つけて実践してみる。プライベートでも何か挑戦してみる。仕事の充実度はそのままに、今よりもう少しだけ自分や家族の時間に重心を置いて生活できる時代になるといいと思っています。

取材・文 華井由利奈

第3回に続く

 

 

東 奈々子
取締役副会長・ファウンダー
Voltage Entertainment USA, Inc. COO
1969年東京生。津田塾大学学芸学部卒業後、広告代理店に入社。2000年パートナー津谷の起業に伴いボルテージへ参画、副社長に。ボルテージ東証一部上場を経て、13年から米国進出のため、3人の子どもと共にサンフランシスコへ。16年3月に帰国。
佐藤悦子
「SAMURAI」クリエイティブマネージャー
1969年東京生。早稲田大学教育学部卒業後、広告代理店、外資系化粧品ブランド勤務を経て2001年クリエイティブディレクター佐藤可士和のマネージャーとしてSAMURAIに参加。大学や幼稚園のリニューアル、病院のトータルディレクション、数々の企業のCIやブランディング、商品及び店舗開発などプロジェクトのクリエイティブマネージメント&プロデュースに幅広く携わる。著書に「SAMURAI 佐藤可士和のつくり方 改訂新版」(誠文堂新光社)、「子どもに体験させたい20のこと」(筑摩書房)など。

アーカイブ:ロールモデルのいない人生のつくりかた