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ロールモデルのいない人生のつくりかた<Vol.2> 夫婦二人三脚で、会社と子どもを育てる!女性経営者&マネージャーの24時間管理術


女子心をつかむ恋愛ドラマアプリを生み出し続ける「ボルテージ」と、世界で活躍するクリエイティブディレクター佐藤可士和氏の事務所「SAMURAI」。仕事の領域も組織構成も全く違いますが、実はどちらも創業者夫婦が公私ともにパートナーとなって大きく成長した会社です。ちょっと変わり者の夫を持つ妻たちは、いったいどのように会社組織と自分の人生をつくりあげてきたのでしょうか?
第二回のテーマは、それぞれの会社のこだわりの仕事術と、家族との付き合い方について。プライベートを含めた1日のスケジュールなど、女性経営者ならではの視点で語ります。

任せるところは任せる。論理的に説明する。

――社内の仕事のなかで、こだわりを持って取り組んでいることはありますか?

:ボルテージでは「提案会」という社員がA4一枚で発表を行うことをかなり前からやっています。これは、前職時代のプレゼンを意識して導入したもので、業務プロセスやコンテンツの改善などの考えを簡潔にまとめて発表する形式です。

佐藤:会社の規模が大きくなると誰がどんな仕事をしているのかが見えにくくなってしまうから、発表の場が大切になりますよね。SAMURAIは10人程度の事務所なので、週に1度スタッフミーティングをして情報共有をしています。

:最近では、自部署や部署間の課題を洗い出して、解決策を話し合うという「エボルブ会」というのも始めました。「エボルブ」はポケモンGOでモンスターが進化するのからとった名前で、現状を打ち破って次のステージに行こうという意味です。

佐藤:なるほど(笑)これも、会社の規模が大きくなってきているからですね。

:ところで、SAMURAIでは、佐藤可士和さんのノウハウを社員に伝えていくための取り組みは、何かやってる?

佐藤:特に形式的なものはやっていないけど……。仕事のスタンスとして、“任せるところは任せる。でも、脳みそは預けない。”ということは意識しています。新しい仕事が始まる時に、課題とゴールイメージを設定してそこに向かっていくための大きな方針やコンセプトを構築し、CIなら社名やロゴ、コーポレートステートメントなどプロジェクトの根幹となる部分はすべて佐藤が設計します。その後の実際の展開や運用のフェーズでは思い切ってスタッフに任せるようにしています。でも任せるのと脳みそを預けるのとは違うので、全案件の進捗状況を常に佐藤可士和が見て、確認しています。

:可士和さん、本当は全部自分でやりたいんだろうけど、ぐっと我慢されているんじゃないかな?

佐藤:以前は佐藤もスタッフも未熟で「ちょっと貸して」って言って、スタッフのMacの前に座って自分で修正をしてしまうこともありました(笑)でも最近は修正するポイントを言葉で伝えて、スタッフが作業するようにしています。そうでないとお互い成長しないので。

:言葉で伝えるのって大事ですよね。ボルテージでも、なるべく論理的な言葉で話すようにしています。

佐藤:例えば、どんなふうに?

:ちょっとベタな例ですが、このVR技術を使った「椅子ドン」のポスター。最初は女性の写真が入ってなかったんだけど、修正して入れることにしたんです。


でも「写真を入れて」って言うだけだと作った本人は納得しませんよね。このポスターの目的は何か、それをわかりやすく伝えるために必要だ、ということを説明しました。

佐藤:修正一つとっても、論理的に話し合うと社員にとって学びになりそうですね。

:そうなの。自分の作ったクリエイティブを感覚ではなく論理的に説明できるようになることで、若い社員が成長して欲しいと思っています。

佐藤: SAMURAIはブティックのように小さな事務所だけど、スタッフが一人ひとり確実に成長して、いつかここから独立してもらいたいと思っているんです。将来的には「素晴らしいクリエイターを輩出する事務所」と言ってもらえるようになりたいですね。

 

 

東 奈々子
取締役副会長・ファウンダー
Voltage Entertainment USA, Inc. COO
1969年東京生。津田塾大学学芸学部卒業後、広告代理店に入社。2000年パートナー津谷の起業に伴いボルテージへ参画、副社長に。ボルテージ東証一部上場を経て、13年から米国進出のため、3人の子どもと共にサンフランシスコへ。16年3月に帰国。
佐藤悦子
「SAMURAI」クリエイティブマネージャー
1969年東京生。早稲田大学教育学部卒業後、広告代理店、外資系化粧品ブランド勤務を経て2001年クリエイティブディレクター佐藤可士和のマネージャーとしてSAMURAIに参加。大学や幼稚園のリニューアル、病院のトータルディレクション、数々の企業のCIやブランディング、商品及び店舗開発などプロジェクトのクリエイティブマネージメント&プロデュースに幅広く携わる。著書に「SAMURAI 佐藤可士和のつくり方 改訂新版」(誠文堂新光社)、「子どもに体験させたい20のこと」(筑摩書房)など。

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