〜彼とすれ違いのあなたへ〜
『最初のお客さん』


*・*・*・*・*・*・*・*・
「どこまで行く?」

「うーん……海まで」

「キミコは俺をクビにしたいの?」

「ジョーダンだってばぁ。次の地下鉄の駅で降ろしてよ」

「最近、ずっと会えなかったから久々のデートだなぁ」

「これ、デートのつもり?」

「……せっかく会えたのにまたけんか、か?」

「ゴメン、ちょっと言ってみただけ。マナブってすぐ怒る」

「余裕ないよ、今は……やっと就職したばっかしだし」

「悪気ないんだってばぁ。何かさ、つい軽いこと言っちゃうんだよね、私」
 

「キミコのせいじゃないよ。俺、ひがみっぽくなってるからさこの頃」

「マナブ……」

「新卒1年でリストラになるバカヤローだからさ」

「もうやめてよ。今日は初出勤なんだし。めでたい日じゃん」

「まあな」

「その制服、似合ってるよ」

「そっかぁ?」

「うん、惚れ直しちゃう」

「ばーか……おせーじ言っても何もでないぞ」

「何もいらないよ。マナブさえいれば」

「……そーゆーことは勤務時間外に言ってほしーんだけど」

「照れてる?」

「んなこたぁない」
 

「あっ照れてる照れてる」

「お客さん、着きましたよ」

「もう? おいくらですか?」

「料金はいらないよ」

「えっ?……」

「お前から金もらえるかよ」

「だけど……」

「キミコを一番最初に乗せたいって決めてたんだ。絶対」

「……ありがとう、運転手さん」

作 三好 美和
   
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