〜モト彼が気になるあなたへ〜
『二人だけの思い出』



*・*・*・*・*・*・*・*・
「待った?」

「ううん」

「マコ、髪切ったんだ」

「うん、ケイスケもちょっと痩せた?」

「そうかな……」

「雨、ひどくなってきたね。濡れてる」

「ん……大丈夫、わざわざ悪かったな、取りにこさせたりして」

「よかったのに。そんなたいした高い本じゃないし」

「でも、借りっぱなしはいやだから、俺」

「ふふ……懐かしい……この本」

「珍しいよね、『ハワイの歴史』っていうのも。観光ガイドならいっぱいあるけどさ」

「だってあの頃、ケイスケったらすぐ五月病にかかって……」
 

「すぐ南の島に行くって言い張ったんだよな」

「くくくッ……モラトリアムだったよね」

「今もあんまり変わりないけどさ」

「毎年毎年、5月になると『会社やめたい』って言ってンの?」

「……まあね……」
「南の島に行ってぱーっと遊びたいって?」

「……ハワイのビーチで酒飲んで、日がなゴロゴロ酒飲んでたいじゃん」

「読みたい本、山ほど持っていって?」

「そうそう、なーんにもしないでひたすらビーチで酒飲んで海見てるの……いーよなあ」

「……いーよねえ、んでカメハメハ大王に会えたりして」

「会えるさ、きっと」

「それ……今の彼女にも言うの?」
 

「……まさか」

「しっかり者なんだぁ……ケイスケに愚痴言わせないなんて。もしかして結婚?」

「まあね……」

「だから返しにきたのかこの本」

「それだけじゃないけど……」

「そーじゃないけど何?」

「……マコの気持借りっぱなしだったから、本と一緒に気持も返しにきた」

「……ねえ、一つお願い」

「ん?」

「新婚旅行、ハワイにだけは行かないで」

作 三好 美和
   
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