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【会社改革の500日 vol.5】“逃げないリーダー”が勝利をつかむ 代表取締役 津谷祐司

稼ぎ方のスキルは、日頃の勉強はもちろんだが、実体験から学ぶしかない

500日改革を進める中で、避けては通れない道がある。リーダーの育成だ。僕一人が直接指導できる人数は限られるが、複数のリーダーがいれば、社員を1000人、2000人と拡大できる。しかし、リーダーを育てるのはなかなか難しい。

現在ボルテージには、「ユニット長」という現場の最高位リーダーが15人いる。みな、30代半ばだ。ひとつのユニットには50~100人のメンバーがいるが、ユニット長に求められるのは、この人数を統率し成果をあげること。あげるべき成果は、ビジネス系ユニット長なら、競争力のある商品を生み出し、売上と利益を上げること。スタッフ系なら、組織的ノウハウと各人のスキルを高めることだ。そのためユニット長には、経営陣と部下が納得する切れ味のあるプランを作り、100人を動かし、計画を実現する力が求められる。

ユニット長になるまでには、2つの関門を突破しなければならない。20代で部下5人のチームリーダーとなり、30歳前後で部下10~30人のマネージャーに昇格する。各々で実績をあげることができたなら、少なくとも30人を率いる力は持っているはずだ。

100人を率いるには、勉強し続けるのは当然だが、知識だけではダメだ。実体験の中で常に試行錯誤を続け、スキルをブラッシュアップする必要がある。僕もできる限りアドバイスや刺激を与えるが、本人の実体験に勝る先生はない。

こういう考え方なので、僕は、新米ユニット長にいきなり全権を渡すことはしない。習熟度を見ながら、少しずつ任せる範囲を広げていく。リーダーが扱うのは、商品づくり・販売・組織運営と多岐にわたるので、全てをドンと渡してもできるわけがない。つぶれるのがオチだ。そうではなく、最初は、僕や前任者が築き上げた既成の制作プロセスや組織運営法を受け入れてもらう。自由度は1~2割。数ヵ月はその中で試行錯誤してほしい。

本やスクールで学べるのは机上の理論。どんな局面でどう行動すればよいかは実体験を十分積まないとわからない。30代半ばは、社会人としてようやく10年経ったところだ。100人を率いるには、まだまだ失敗が足りない。成功できるかは、いかに失敗から学べるか、にかかっている。

【会社改革の500日 vol.5】

リーダーに必要なのは逃げない強さ

100人のリーダーになるために、もう一つ大切なのが、リーダーとしての姿勢だ。目標を(適正に)高く掲げる志の強さ。課題に真摯に向き合う姿勢。なにより困難から逃げない姿勢。これがないと部下はついてこない。若い部下は、無難な毎日を送りたいのではなく、不安と闘いながらも、高い目標、新しいことに挑戦し、ワクワクした日々の中で自分を成長させたいのだ。

部下から突き上げを食らい、「自分は何も分かっていなかった」と落ち込む日もある。でもリーダーになったら、逃げずに立ち向かう。リーダーは、日々、全人格を試されている。

たった1回のチャンスで成功できなかったからといって、全てを悲観する必要はない。僕も36歳で起業し、失敗続きでここまできた。もちろん同じ失敗を繰り返すのはバカ者だ。もうチャンスは与えられない。だが一度失敗したとしても、また乗り越えるべき壁は現れる。致命傷さえ避ければ、2回目3回目のチャンスは必ずくる。

1人のリーダーを育てるため、数億円の投資を覚悟している。過去の成果でそのチャレンジ権を得たのだから、自信を持って立ち向かえ。

失敗の真因を徹底的に掘り下げる

逃げずに突き進むと決めたとき、リーダーが最初にすべきは敗因の徹底的な分析だ。たとえば新作アプリがヒットしなかったとする。その原因を問うと、リーダーは「ストーリーの設定が良くなかった」「運営イベントがよくなかった」と答える。しかし、これでは全然足りない。もっと掘り下げないと、いつまでも勝負に勝てない。

そもそもユーザーが求めるストーリーを把握できていたのか。明確なユーザー像をチームで共有できていたのか。真因が水面に浮いていることはない。苦しみもがいて初めて触れられる。

経営者である僕でさえ、会議やデータ分析だけで答えを導き出すのは難しい。就寝時や目覚めの時など、リラックスした状態で考え続ける。思いつけば付箋にメモし、早朝に数時間かけて手帳に書き出す。戦略発表前の1カ月は、1時間で数枚も書く日があった。光が届かない深海に潜り、模索する毎日だ。

今、500日改革で、停滞の真因をほぼ突き止めた。来期の業績の手応えも感じる。15人のリーダーには、まだこの感覚がわからないかもしれない。だが失敗から逃げず、全人格をかけて真因の追求に挑めば、成長を実感する日が必ず来る。ヘナヘナ逃げるか、未来を見据え前へ進むか……。荒波に立ち向かう若きリーダーたちを、僕は信じている。

取材・文 華井由利奈